あかい、あかし
ぱしん、と乾いた音が響いた。 「ああ、痛いよ、ハル」 「アキが、アキがやれって言うから」 「僕のせいにするの?ふふ、悪い子だ」 「そんなつもりじゃない」 「ハル、真っ赤な手をして、かわいそうに」 「……アキの顔のほうが真っ赤だ」 「ふふ、誰がこうしたんだろうね。教えてよ、ハル」 「いやだ」 「ハル。ねえ、僕をぶったのが誰かちゃんと教えて、ハル」 「俺の、手」 「そうだよ。僕の大好きなハルの手の跡が、僕にしっかり残ってる」 「……アキは、いじわるだ」 あかい瞳にじわりと涙が滲む。 「ちょっといじめたくなっただけだよ、ごめん。そうだよ、僕がハルにお願いしてやってもらったんだ」 「アキ、こんなこともうやめよう」 「どうして。僕の望みだよ」 「こんなこと、俺はもうしたくないよ、アキ」 「でも、こうしないと僕は不安なんだ」 「アキ、もうやめようよ、こんなの嫌だ」 「泣かないで、ハル」 ごめんなさいとつぶやくハルの頬をつたう涙をひとつぶ優しくその唇ですくい取る。 「二人の仕事ならいいけど。ひとりで残されるのが僕は不安だから、ごめんね、ハル」 「ほら、そろそろ仕事の時間だよ」 じんと頬の痛みが広がる。 (これはハルが帰ってきてくれるあかし)